10年前の尖閣沖 中国人船長釈放の嘘と詭弁~産経新聞・阿比留瑠比氏の極言御免

 中国人船長の釈放を発表したときのことである。「地検独自の判断だ。それを了とする」
 当時の菅(かん)直人内閣の仙谷由人官房長官は、すぐに記者会見でこう追認し、柳田稔法相は記者団に、問わず語りで「指揮権を行使した事実はない」と強調した。と言うのが表面上の発表。

 実際は真っ赤な嘘だったことが明らかになったのだ。
 それが10年後に明らかになったのだから胸のつかえが一気に吹き飛んだ形であり「そうだろうナァ」と言う納得きもちもある。

 そこのところを産経新聞・阿比留瑠比氏が極言御免で述べているのでどうぞ・・・ 
 
【阿比留瑠比の極言御免】
中国人船長釈放の嘘と詭弁
2020.9.10・産経新聞

 あのときの目がくらむような怒りと失望は、今もはっきりと覚えている。平成22年9月24日、那覇地検が緊急記者会見で、尖閣諸島(沖縄県石垣市)沖の領海内で、海上保安庁の巡視船に体当たりを繰り返した中国人船長の釈放を発表したときのことである。

 「地検独自の判断だ。それを了とする」

 当時の菅(かん)直人内閣の仙谷由人官房長官は、すぐに記者会見でこう追認し、柳田稔法相は記者団に、問わず語りで「指揮権を行使した事実はない」と強調した。
 折しもこの日、菅直人首相は米ニューヨークでの国連総会出席のため外遊中だった。当時、検察は大阪地検特捜部の押収資料改竄事件で追い詰められていた。そんなタイミングでの不自然極まる発表だった。

真っ赤な嘘裏付け

 米誌ニューヨーク・タイムズ紙は漁船衝突事件についてこんな予測を示した。
 「日本と中国の外交対決は、屈辱的退却に見える日本の譲歩で終わった。中国がアジアでの領土紛争で、大胆さを増す危険を引き起こした。
 東シナ海や南シナ海の現状をみれば、残念ながらその通りとなっている。
 そして10年後、前原誠司元外相が産経新聞の取材にようやく重い口を開き、菅(かん)首相が中国人船長の釈放を求めたと明らかにした。釈放が菅首相の意向だったこと自体は、これまでも複数の証言がある。ただ、実際に菅首相が「かなり強い口調で『釈放しろ』と言った」場面に外相として立ち会った前原氏の証言は重い。
 菅首相は「検察当局が粛々と判断した結果だ」と記者会見や国会で述べてきたが、真っ赤な嘘であることが改めて裏付けされた。
 現在は立憲民主党最高顧問を務める菅氏は早速、8日の自身のツイッターにこんな反論とも弁明ともつかぬことを記した。
 我が国法令にに基づき、厳正かつ粛々と対応したものである。指揮権を行使しておらず、私が釈放を指示したという指摘はあたらない」
 また、菅内閣の官房副長官だった立憲民主党の福山哲郎幹事長も、示し合わせたとみられるそっくりな文面をツイッターに書いた。
 「我が国の法令に基づき対応したものである。指揮権を発動しておらず菅総理が釈放を指示したという指摘は当たらない」
 何を云っているのだろうか。国家公務員法に基づく正式な手続きによる指揮権の発動でなければ指示ではないないという詭弁が、どこの世界で通用しよう。国のトップたる首相が配下に「釈放しろ」と言えば、それは指示であり命令である。
 立憲民主党は、安倍晋三首相が指示も命令もしていないことについて「首相の意向で行政がゆがめられた」だの「官僚の忖度を生んだからけしからん」だのと非難し続けてきた。菅氏や福山氏の理屈でいえば、これらは全部、えん罪であり言いがかりとなる。

小泉首相との違い

 福山氏は平成16年に、小泉純一郎内閣が尖閣諸島に不正上陸した中国人活動家を強制送還したことも強調する。だが、船長釈放とは根本的に違う点がある。小泉首相は政治の責任と指示から逃げず、こう堂々と述べている。
 日中関係に悪影響を与えないよう大局的に判断しなければならない。そういう基本方針に沿って、関係当局に指示した。
 菅内閣は、閣僚が国会で虚偽答弁した際の道義的・政治的責任について「答弁の内容いかんによる」とする答弁書も閣議決定した。閣僚が嘘をついてもいいという内閣の意思を表明した政権なのだから、何とかいわんや。(論説委員兼政治部編集委員)